女性のキャリア形成に欠かせない育児休業制度ですが、当事者になるまでは詳細を知らない人も多いものです。期間や給付金の条件、男性が取得する場合の注意点まで、育児と仕事を両立させたい女性に紹介したい基礎知識をおさらいしていきます。
育児休暇と育児休業
育児休業とは、育児・介護休業法に基づいて取得できる法律上の権利です。就労と結婚・子育ての二者択一になっていた社会の構造を変えて、ワークライフバランスをとりながら無理なく生活できるように、法の整備が進みました。法律で守られている権利なので、取得のための条件が決まっています。条件を満たして申請した育児休業は原則的に断ることができず、解雇や配置転換など不当な扱いをすることも禁止です。
なお育児休暇と呼ぶとき、育児休業とは区別されます。あくまでも「休暇」に過ぎず、休んでいる間の保障や期間は会社ごとにさまざまです。職場復帰をしたあとに休暇取得前と同じ待遇を受けられるかは、会社の判断によるところ。不当な扱いを受けたとしても守ってくれる法律はなく、泣き寝入りとなりかねません。
育児休業の期間・条件・手続き方法
育児休業は、以下の3つの条件を満たした人が対象です。条件を満たしていれば、有期雇用の契約社員にも適用されます。
1. 同じ事業主のもとで1年以上働いている
2. 子どもが1歳になったあとも引き続き雇用される見込みがある
3. 子どもが2歳の誕生日を迎える2日前までに労働期間満了、もしくは更新されないことが明白でない
育児休業の期間は、子どもが1歳の誕生日を迎えるまでのうち希望する期間が原則です。1歳になっても保育所に入れないなど特定の事情があれば、1歳6ヶ月になるまで延長できます。2017年10月からさらに期間が延長され、現在では最長2歳まで延長することも可能です。
育児休業を取得するための手続きは、会社の規程に従いましょう。就業規則で申請フォーマットが決まっていれば、指定されたとおりに手続きします。会社に規程がない場合も諦める必要はありません。育児・介護休業法を根拠として、しかるべき権利を主張できます。
育児休業にもらえるお金と免除制度
雇用保険から育児休業給付金が支給されます。原則的には休業開始前賃金の67%、休業開始から6ヶ月以降は50%の支給です。支給されるお金は非課税扱いになるため、所得税が差し引かれることはありません。住民税の計算対象からも外れるので、まるまるもらえるイメージです。
また、年金や健康保険などの社会保険料も免除されます。保険料の支払いをしなくても健康保険はこれまでどおり使えますし、将来の年金にも反映される仕組みです。社会保険に関して不安なことがあれば、年金事務所や健康保険組合に聞いてみましょう。会社の担当者に相談することでも、アドバイスは受けられます。
育児休業の延長?男性の取得?
子育ては夫婦で協力して行うものです。夫婦そろって育児休業を取得すると、2ヶ月間の期間延長が認められます。子どもが1歳2ヶ月になるまでの間に1年間の休業が可能になり、家族で過ごす時間を増やしたい人におすすめです。
育児休業給付金は、夫婦それぞれに対して支給されます。前述のように税金や社会保険料の免除があるため、手取りで考えたら8割くらいを確保できることもあるそう。できるだけたくさん給付金の恩恵を受けようと考えるなら、こんなスケジュールを立てるのも手です。
出産~2ヶ月:母親の産後休業期間 ←健康保険から賃金の3分の2相当支給
3ヶ月目~6ヶ月:母親の育児休業 ←育児休業給付金67%
9ヶ月目~6ヶ月:父親の育児休業 ← 育児休業給付金67%
6ヶ月目以降からは育児休業給付金の支給率が50%に下がるため、父親の育児休業に切り替えるイメージです。母親の体調とも相談しながら、上手な活用方法を考えてみましょう。
気を付けておきたいポイント
育児休業は、休んだあとに会社に戻ることを前提として支給される仕組みです。「無事に出産できた暁には会社を辞めよう」と考えている人は対象から外れます。退職するつもりはなかったものの休んでいる間に気が変わり、退職することになった場合は、退職日の1つ前の期間までが対象です。もらった分を返却する必要はありませんが、速やかに申告しましょう。
育児休業期間中に就労する人も、少し注意が必要です。臨時的・一時的な就労は可能ですが、10日以内もしくは月に80時間以内という条件があります。在職している会社以外で行ったアルバイトも、日数や時間のなかに含まれるルールです。頑張って働いた結果としてかえって損することにならないように、よく考えて行動しましょう。
また、育児休業が終わったあとにもいろいろな支援はあります。子どもが3歳になるまでは時間外労働を制限したり、1日原則6時間の短縮勤務が認められたりと、ワークライフバランスを考えた働き方が認められる仕組みです。小学校就学前の子が体調不良になった際には、1人に対して年5日、2人以上なら年10日を上限とした看護休暇を取得できます。
このように、子育て世代に対しては手厚いサポート制度が整っています。育児休業の期間や条件、注意点をあらためて見直し、家族計画に役立てましょう。